村山嘉昭

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泡盛の香りに。

友人から古い50CCのスクーターを貸してもらい、沖縄本島南部にある県営平和祈念公園の「平和の礎」へ出かけた。本島南部に点在している戦跡は何度か訪ねたことがあった。だけど、これまで平和の礎だけは足を運んだことがなかった。今月23日に催された「慰霊の日」の式典に関する報道を見たばかりということもあり、どのようなところなのか見てみたいと思った。フルスロットルでも時速35キロが精一杯のスクーターだけど、行ける時に行こうと那覇から向かった。車だとあっという間に着いてしまう距離。だけど、今日は少し違った。後続車に気を遣いながら、ノロノロと走った。しかし、これはこれで発見が多かった。地面の起伏がダイレクトに感じられ、平坦だと思っていた道がゆるやかな丘の繰り返しだと気づいたり、駆け足では見逃してしまうささやかな景色に見惚れたりもした。そして何度目かの丘を越えた瞬間、目の前に海原が飛び込んできた。沖縄らしい眺め。珍しくもない見慣れた景色。でも、今日はやっぱりいつもと少し違って見えた。海が陸の終わりを告げているように思えた。72年前、砲撃や戦闘から逃げるために南へと向かった多くの人たちは、この海を前にしてどのような思いを抱いたのだろうか。目指す公園は、その陸の端にあった。

骨のかけらと故郷への思い。

長崎県が計画を進めている石木ダム事業の是非を巡る議論は、右や左といったイデオロギーとは無縁のもので、計画に反対している住民の思いは党利党略とはかけ離れたものです。社会情勢が計画立案当時から大きく様変わりした現在、莫大なコストをかけ、13世帯の家屋や土地を強制収用してまで計画を進める「大義」が果たしてあるのか…。計画地に暮らす住民はその大義の中身を公平な場で話し合うことを求めているだけです。・昨年、石木ダムの計画地を訪ねた際、この地で親子3世代で暮らしている炭谷さんが仏壇にある過去帳を見せてくれました。過去帳は宝暦三年、今から260余年前に亡くなった先祖から始まっており、先祖代々に渡って受け継がれてきたものです。この時、炭谷さんが古い先祖の墓を掘り起こしてひとつにまとめる「墓寄せ」のエピソードを話してくれました。墓寄せは父の遺言「先祖と一緒に供養して欲しい」という願いを叶えるために12年前に実施。苔むした墓標の下から掘り起こされた骨を拾い上げるたびに、炭谷さんは過去帳に記された先祖が近しい存在に思えてきたそうです。 「彼らがいたから、オイたちがいるんだ」 骨のかけらを手のひらにのせるたび、炭谷さんは理屈ではなく感覚としてしぜんと先人への感謝の気持ちが湧き上がり、先祖の存在を強く実感。 「オイの代でここを水の底にするのは堪えられん」と、土地を預かる責任の重みに改めて気付かせたといいます。 ・都市で生まれ育ったオレ自身は故郷意識が希薄ですが、次世代への責任を果たしたいとの考えに深く共感しました。
故郷を守り残したいと願う気持ちはイデオロギーではなく、普遍的な大切な感情です。

『桜語り』のフォトブックができました。

2011年春からの6年間、東日本大震災や東京電力福島第一原発事故の〝被災地〟で撮り続けた桜の写真を一冊のフォトブックにまとめました。 タイトルは過去開催した写真展と同じ『桜語り』としました。 約15センチ四方のフォトブックに129枚の写真を収録しています。ページ数は144ページ。写真は撮影年順にまとめ、巻末に短いキャプションを綴っています。 一般の方も利用できるフォトブックサービスを使って制作し、印刷の美しさよりも配布価格を抑えることを優先しました。印刷クオリティはけっして高くはありませんが、写真の背景は十分伝わると思います。 配布価格は送料込みで、一冊1,500円です。売上げは今春の桜撮影旅に充てようと思っています。 収録した写真の一部は今月1日から毎日1枚ずつ「ウェブサイト」に公開しています。 写真をご覧いただき、フォトブックに関心を持っていただけたら幸いです。ネットで簡単に購入手続きとならず申し訳ありませんが、ご注文は「ゆうちょ銀行」の振替口座のみ受け付けています。払込書の写しがこちらに届き次第、フォトブックの発送注文手続きをさせていただきます。 フォトブック制作会社から直接「ゆうメール」にてお届けします。 払込書に記入する振替口座は以下になります。 == 口座記号番号:00120−2−514163 加入者名:リバーストーンズ == 払込書には必ず【フォトブックを送付する住所(郵便番号・住所・電話番号)とお名前】をわかりやすい字で記入してください。出張と重なった場合は手続きが遅れることもあるかもしれませんが、あたたかい気持ちで到着を待って下さると助かります。 どうぞ宜しくお願いいたします!

二度失われる故郷のこと

4年前の今日、福島県大熊町から会津若松市へ避難しているふたりの女性と一緒に彼女たちの自宅へ出かけました。 月に一度しか許可されない一時帰宅への同行。彼女たちとは少し前に知り合い、一時帰宅する際は声を掛けて欲しいと伝えていました。 Oさんの自宅は大野駅に近い住宅地にあり、Nさんの自宅は福島第一原発から3kmも離れていないところにあります。 まず先にNさんの自宅へ立ち寄り、お墓に花を添えてから、Oさんの家に向かいました。 当時は国道6号も通行解除となっておらず、行き交う車はほとんどありませんでした。 一時帰宅するたびに片付けをしていたNさんと違い、Oさんの住まいは「荒れた家を見ると地震で散らばった物を片付ける意欲もわかない」と、地震で崩れた家財道具などがそのままになっていました。 ネズミの糞も目立ち、Oさんは終始ため息ばかりついていたのを覚えています。 この日、Oさんが自宅に帰ってしたことは、庭に粉末の除草剤を撒いたことと、居間でみつけたネズミの屍骸をゴミ袋に入れたことだけです。 道中、除染廃棄物が詰められたフレコンバックが道路脇に積み上げられているのを見かけ、何気ない気持ちで「ずいぶん増えてきましたね」とNさんに話し掛けたところ、Nさんの表情が厳しくなりました。 Nさんの自宅や農地、先祖の墓地は除染廃棄物を保管する「中間貯蔵施設」の予定地になっています。 これらフレコンバックを何処かが受け入れないことには前に進まないことを理解しつつも、感情がついて来られず、割り切れない思いでいるのだと、そんな話をしてくれました。 故郷を二度失う人たちがいること、その人たちの犠牲があって前に進めること、これは多くの人が共有するべきことだと、この一時帰宅で強く感じました。以来、安易に「除染廃棄物はどこどこへ持っていけばいい」と口にすることは止めました。事故を起こした福島第一原発周辺には帰りたくても帰ることができない家があり、離れて暮らさざる得ない人々がいます。この事実は4年経った現在もそう変わっていません。

抗議文提出の報道記事をまとめました

長崎県知事への抗議文提出から一夜が明けました。昨日の夕方には地元テレビ局である「NBC長崎放送」のローカルニュース枠で、事実関係だけでなく抗議文提出に至る私の思いなどが報じられました。※ 抗議文の中身や経緯抗議文提出の前々日。NBC記者に電話で抗議文を出すことを伝えると、最初は「立て込んでいるから取材に行けそうもない」と言われましたが、直前になって「自分たちにも関係ある事柄で、問題だと捉えている」からと、長崎市から急いで駆けつけてくれました。NBC記者が取材後に「私たちの素材が同じように使われる可能性があり、問題意識を共有している」と話してくれたのは、とても心強かったです。NBCニュース放送終了後、石木川のほとりに暮らす方から電話があり、ニュースの内容が良かったこと、県内ニュースの一番最初に放送されたことを教えてもらいました。夕方には東京へ戻っていたため、ニュース自体は視聴していませんが、感想を聞く限り、取材してくれたSさんには感謝の言葉しかありません。抗議文提出時、現地には上記テレビ局記者の他、長崎新聞と朝日新聞、毎日新聞と共同通信の記者がいました。本来であれば、メディア各社に等しく取材をしてもらうため、県庁記者クラブに告知をするべきでしたが、今回はいわゆる「投げ込み」をしませんでした。そのためこれまでに名刺交換をした記者個人にメールで事情を説明し、関心がある記者の方が集まってくれた次第です。帰宅後、1週間ぶりの自宅で寛いでいると、共同通信の配信記事を見たNHK長崎放送局の記者から電話が掛かってきました。翌朝のローカルニュースで扱うとのことなので、抗議文などの資料をメールで送付。電話取材だったので微妙に思いが伝えきれなかったですが、今朝のローカルニュース枠トップで報じてくれました。

石木川のほとりにて 13家族の物語

写真集『石木川のほとりにて 13家族の物語』がパタゴニア日本支社より出版されました。価格は税込1,500円です。石木川は長崎県川棚町を流れ、多くのゲンジホタルが生息する小さな河川です。本書はその石木川のほとりにある川原郷(こうばるごう)に暮らす13家族を紹介したものです。2015年5月から本格的に取材を始め、定期的に足を運んでは住民の方から話を伺い、季節ごとに変わる景色や暮らしぶりを撮影してきました。"写真集"を謳っていますが、彼らの思いも知ってもらいたいと考え、文章のみのページもあります。半世紀前、川原郷を水の底に沈める石木ダム計画が発表されました。社会を取り巻く情勢は時代とともに変化していますが、ダム計画は50年が経ったいまも継続中です。そのため13世帯の方々は「石木ダム反対」の声を上げ続けています。一方、起業者の長崎県は事業の妥当性を検証することなく、住民たちとの話し合いを拒否し、彼らが暮らす土地や家屋を強制的に収用する手続きを進めています。13家族、子どもからお年寄りまで総勢60人ほどの住民は、理不尽な思いを抱きつつ、それでも日々、"普通"の人たちと同じように暮らしています。本書がこの地に暮らす人たちを身近に感じ、住民ひとりひとりの思いを知り、石木ダム問題を考えるきっかけになれば幸いです。ぜひ興味があったら手にとってみてください。よろしくお願いいたします。*写真集『石木川のほとりにて 13家族の物語』は全国のパタゴニア直営店の他、同社ウェブサイトから購入できます。書籍のみ購入の場合は送料無料です。ご注文はこちらからどうぞ。